投稿日:2008年09月30日 作成者:yasunaka
昨日ズィット社の「SaaSの現状とPaaS環境でのソフト開発・適用について」というセミナーに参加してきました。まだあまり詳しくない人が現状についての概略をつかむにはとても良いセミナーだったと思います。
私は今までこのブログでPaaSはあまり取り上げてこなかったのですが、今回のセミナーで注目するきっかけを得ました。PaaS(Platform as a Service)とは、SaaS(Service as a Service)がいわば完成品としてのサービスの提供なのに対し、PaaSは未完成品の”Kit”としての提供だと考えるとわかりやすいと思います。
PaaSは活用の仕方によって、独自社内システム開発のために用いることもできますし、PaaSを使って完成させたアプリケーションをSaaSとして提供することも考えられます。
ちなみにPaaSとはSalesforce.comの造語なのでしょうか? マイクロソフトなどでは最近Software plus Serviceなるものを推していますが、コンセプトは異なるものの、狙っているターゲット(企業内で利用するシステムのネットワーク・サービス化)が重なっているように思えます。
昨日のセミナーを聞いていてPaaSが少し厳しいと感じた点は、PaaSを選択するとそのPaaS独自の環境(データベースやコンポーネントなど)に取り込まれてしまい、他の環境へ移ることが難しいという点です。PaaS上でアプリケーションの展開をする場合、ある意味PaaS提供ベンダーというお釈迦様の手のひらの上でビジネスを行うことになります。このリスクをどう考えるかが1つのポイントといえそうです。
投稿日:2008年09月26日 作成者:yasunaka
昨日のブログでは「なぜ上流工程を改善しようとしないのか?」というテーマで、開発プロジェクトを進める上で、みんなが最も改善すべきだと感じている課題は上流工程の問題なのに、それを改善しようと考えている人はあまり多くない、という話を書きました。そして今日は、上流工程を改善するにはどうすべきか、について考察してみます。
おそらく一番重要なのは、上流工程について「学ぶ」ことだと考えます。ここでいう「学ぶ」には2つの側面があると思います。
■システム開発というプロセスを学ぶこと
■ユーザの業務を学ぶこと
おそらく大部分の上流工程の設計者たちは、このどちらかに偏っているのではないでしょうか? システム開発プロセスのプロです、という人はいます。またユーザ業務ならまかしておけ、という人もいます。でもその両方を十分理解して、最適な提案ができる人というのは非常に少ない、というのが私の実感です。
システム開発はバランス感覚が問われる、総合的な判断能力が必要な仕事です。システム開発プロセスを知っていても、ユーザの業務をきちんと理解していなければ必要な機能、不必要な機能の判断もできず、適切なリソース配分ができず、過剰な、もしくは使いにくいシステムとなってしまいます。一方でユーザ業務を知っていてもシステム開発プロセスを理解していなければ、度重なる仕様変更を繰り返し、プロジェクトを疲弊させ、最終的にはプロジェクトを失敗に導いてしまうことにもなりかねません。
この問題を避けるためには、まずは「学ぶ」ことが重要ではないでしょうか? つまりユーザ業務を十分に知らないのであれば、それを徹底的に理解できるように学ぶこと、システム開発プロセスを知らないのであれば、それを徹底的に学ぶこと、何にも増して、まずは学ぶことが最も重要なのだと思います。
足りなかった部分を学ぶことにより、プロジェクトの様々な問題点・改善すべき点が徐々に見えてくると思います。その上で様々な方法論なりツールを活用すれば、鬼に金棒です。
私も何歳になっても、謙虚に学ぶ姿勢は大切にしていきたいと思っています。
投稿日:2008年09月25日 作成者:yasunaka
TechTargetジャパンでプロジェクト管理ツール利用に関するアンケートを行った結果を公開しています。
これを見ると、開発プロジェクトを進める上で、最も改善すべきだと感じている課題は「不十分な要件定義(39.2%)」が突出して多く、続いて「頻発する仕様変更(18.1%)」となっています。
そうなのです。開発プロジェクトにおいて一番改善すべき工程は、要件定義や仕様変更を行う、いわゆる「上流工程」なのです。もちろんプログラミングやテストなどの工程で問題が出ることもありますが、でもそれも実は原因を分析してみると上流工程での結論に問題があった結果、それがプログラミングやテスト行程で問題が発覚した、というケースの割合が非常に多いのです。
でも不思議なことに、問題意識があるにも関わらず、その上流工程を改善しようと考える人はあまり多くありません。なぜなのでしょうか?
上流工程を別のチーム、もしくはベンダがやっていて、そこに対する不満がある、というケースも考えられます。この場合には不満を持つ人と実際に実施している人が異なるので、なかなか問題意識が実施している当人たちに伝わっていない、というケースもあるかもしれません。
もう一つの可能性としては、上流工程を改善するといっても具体的にどうしたらよいのかがわからない、ということも考えられます。いろいろな手法、ツールなどがあるのですが、どのような方法をとったら実際に良くなるのかがはっきりしない、ということです。
プロジェクト運営の方法はおそらく各社各様、同じ会社内でもチームごとにいろいろと特色があって異なるのが実情だと思います。そしてあるチームでうまくいったからといって、ほかのチームでそのまま同じように適用してうまくいくとは限りません。
こういったプロジェクト毎の違いにばかり目を向けていると、全体として上流工程を改善するやり方が見えてこない、というのが実情なのではないでしょうか?
じゃあどうすべきなのか、を明日考察することにしましょう。(できるかな?)
投稿日:2008年09月24日 作成者:yasunaka
ライトスピード社との戦略的パートナー契約に関するプレスリリースを行いました。
詳しくはこちらをご覧ください。
投稿日:2008年09月24日 作成者:yasunaka
「工事進行基準時代のプロジェクト・マネジメントセミナー」というセミナーを開催します。
【受講無料(事前登録制)】2008年10月16日(木曜日) 14:00?16:00
サン・マイクロシステムズ用賀本社内26F セミナールーム
受講予定者数 50名
受講料 無料(事前登録制)
主催 アップデイティット株式会社
協賛 株式会社アドライト,株式会社SDアドバイザーズ,ライトスピード株式会社
工事進行基準のプロジェクトに発生する問題は何か? どう対処すべきなのか、など、プロジェクト・マネジメントの現場に焦点をあてたセミナーを開催します。
「工事進行基準の初歩」から始め、プロジェクト・マネージャにとって気になる疑問点などを、ケーススタディなどを通して理解を深めることを目的とします。参加者の匿名形式でのアンケートを通して、業界動向の把握にも努めます。
また工事進行基準対策で活躍中で公認会計士でもある株式会社アドライトの木村忠昭氏にもオブザーバとして参加して頂き、財務会計と管理会計の観点からのアドバイスを頂きます。
気軽に参加していただけるセミナーです。奮ってご応募ください。
応募はこちらから
投稿日:2008年09月19日 作成者:yasunaka
マイクロソフトは、コンシューマー向け「Windows」を再構築するという記事がITMediaのニュースに載っています。図を見て思ったのですが、これってマイクロソフト版のコンシューマ向けクラウドのイメージですね。(クラウドの先のクライアント側しか描かれていませんが)
1つ感じた点は、マイクロソフトのクラウドはすべてマイクロソフト製品で固められたモノリシック(monolithic)構造だ、ということです。今回の発表ではそれら全部まとめてWindowsという名前で呼びますよ、としています。
そして、「Life Without Walls」(壁のない世界へ)というメッセージ。
ある閉鎖的な環境の場合にはこのモノリシックな構造は管理上都合が良いと思います。しかしコンシューマ向けのクラウドとしてモノリシックな構造を望む人がどのぐらいいるのでしょうか? 確かにマイクロソフトの場合、それを主張できるだけのバックグラウンドがあると思いますが、新しいクラウドの世界においてもマイクロソフトがPCの世界と同様のポジションになることを望む人(会社)はあまり多くないんじゃないか? と勝手な想像ですが、そう感じています。
そしてモノリシックさを強調すると、モノリシックなものとそうでないものの間に「Walls」ができてしまうのではないでしょうか?
そもそもクラウドの考え方の中では、その中の各デバイスが特定のOSなり、ミドルウェアなりに拘泥されない世界がイメージされていると思うのです。もちろんWindowsがその世界の中で重要なプレイヤーとしてある地位を占める、というのは当然の成り行きだと思いますが、クラウドの中ではWindowsも1つのプレイヤーに過ぎず、他の仕組みともWindows間のやり取りと同様にWebという仕組みでインターフェースできるんだよ、と伝えていくことが本来あるべき姿なのではないか、と感じました。
投稿日:2008年09月18日 作成者:yasunaka
約1年前に、SaaSについて私のブログでこんなことを書いていました。
■ 技術者の立場から見たSaaS(および技術者の立場から見たSaaSその2)
■経営者の立場からみたSaaS
今回はその第3弾(1年ぶり…)として、ユーザの立場から見たSaaSというテーマを考えてみたいと思います。
ユーザから見たときのSaaSならではのメリットは、実は上記の2つでも同じことを言っているのですが、「継続的な改善」にあると思っています。
一般に、SaaSモデルでは継続的に行われるバージョンアップについて、特別な料金を取ることなしに最新のバージョンが利用できるようになっていると思います。勝手にどんどん機能向上していくということです。継続的に改善が行われていれば、システムが陳腐化するリスクが比較的小さいといえます。
パッケージ型の場合には導入した以降、期間がたつと必ずシステムが陳腐化してきて、いずれ新しいバージョンを導入するか、乗り換えるか、という話になります。この場合、新しいバージョンへの入れ替えにしたとしても、カスタマイズ部分の作りかえやテストなど、それなりのコストと期間を要します。このためになかなかバージョンアップができずに、導入してしばらくたった現在、塩漬け状態になっているというケースも多いのではないでしょうか?
SaaSを導入するという理由はもちろんこれだけではありません。他にも例えば
(1) ハードウェアなどを購入する必要がないこと
(2) 運用を自前で行う必要がないこと
(3) ソフトウェア費を経費化できること
など様々なメリットが考えられます。ただ(1)や(2)についてはアウトソーシングと言った観点でのメリットであり、(3)もリースにすれば同等の効果が得られるなど、必ずしもSaaSでなければ実現できない、というものではないです。しかしこういったメリットも含めて一括で恩恵を受けることができるというのは、やはりすぐれた方式であるといえると思います。
上記に加え、さらにシステムの陳腐化をできるだけ抑えるという観点でSaaS導入を考えるという時代がいずれ来るものと、私は考えています。
投稿日:2008年09月17日 作成者:yasunaka
ITProに元ライブドア社長のホリエモンの対談記事が載っています。いろいろ意見のあるところかもしれませんが、私は素直に視点がいいな、と思いました。
視点の良さを一番感じたのはテレビ局買収の話の部分で、次の下りです。
— 引用 —
僕のビジョンは非常に単純でした。テレビの画面にURLを流し続ける,ただそれだけでした。ネットにユーザーを集める純粋な広告媒体として,テレビ局が必要だったのです。
————
テレビ局買収の話についてはいろいろ言われていますが、上記の話は結構真理を突いていると感じます。テレビのユーザをネット側に連れてくるにはテレビ局ごと買収して、そこから誘導するのが一番手っ取り早いわけです。
以前テレビ局買収の話で盛り上がっていたときには、正直なところ、ライブドアはテレビのコンテンツが欲しいのだとばかり思っていました(でもそのコンテンツの2次利用にはご存知の通り、いろいろ面倒くさい問題があるわけです)。でも実はそれよりも重要なのは認知度というブランドであり、それを得るためにはテレビが最も適した媒体だ、ということであれば、テレビ局を買収しようとしたとしたのは筋の通った話だと思えます。
ビジネスというのは対象となる見込み客の認知を得て初めて成り立ちます。コンテンツ云々が問題になるのはその後の話であり、順番としてはまず認知してもらうことが大切なのだと思います。
純粋にブランドを得るための広告宣伝費と考えた場合、非常に割安な案件だったのかもしれません。
ちなみに、その時の資金提供元が昨日破たんしたリーマン・ブラザーズでした。手法としてはかなり大胆な(無茶苦茶な?)方法での買収だったのですが、もしそれが成功していたら、今のIT業界の地図はだいぶ変わっていたのかもしれません。
投稿日:2008年09月16日 作成者:yasunaka
本当は今日はANAのシステムトラブルのニュースも気になっていたのですが、私自身がもともとは金融系SEの出身ということもあり、あまりにもこちらのインパクトが大きく感じられたので…
テレビのニュースで盛んに取り上げていますが、あのリーマンブラザーズが破たんというのは、非常に感慨深いものがあります。そして今後さらに大きな展開がありそうにですね。サブプライムローンに端を発する今のアメリカの状況は、ちょうどバブルに踊ってはじけて、それ以降10年間近い停滞の期間が続いた以前の日本と似て見えますよね。
この先どのような連鎖が起きるのか、非常に気になるところです。とりあえず今日の日経平均の下がり方は尋常ではない…
投稿日:2008年09月12日 作成者:yasunaka
ITProの記事にNTTデータの松田氏が語る,「コンペ敗退で気付いた,企業ネットの“第3の目的”」というのが載っていました。内容は海外のデータセンターがあまりにも格安の値段で、コンペで負けてしまったというものでした。
唐突ですが、クラウドという話をするとあまり雲(クラウド)側のことは気にせずに、サービスレベルの話に気を取られがちです。その観点では気づきにくいのですが、実は上記の話のような形で、「企業レベルでのシステム利用のクラウド化」というのが実は進展しつつあるのではないかとしたら、見逃せない話ではないでしょうか?
つまり企業にとって、クラウドの先はどこでも良い、ということなのです。メンテナンスに問題がなく通信インフラが整ってさえいれば、別に海外でも構わないことになります。
ここでいうクラウド化というのは一般にクラウドという概念から比較すると、その一部分だけの話に聞こえるかもしれませんが、実は企業のシステムが標準的な基盤上で稼働可能なものにシフトしてきている現在、企業システムのクラウド化というのは非常に大きな意義をもつのではないかと思います。
データセンターやハードウェアなどの資源は保有するのではなく、借りるものだ、という意識は企業にとって徐々に一般的なものになってくると思います。例えSaaSのような共同利用型のシステムではなくて自社独自のシステムを使うにしても、利用する資源の組み合わせにおいて様々な選択肢が広がってきているように思えます。