善意の著作権侵害
投稿日:2010年05月19日 作成者:yasunaka
YouTubeやニコニコ動画は皆さんも良くご存知でしょう。これらの動画サイトにはいろいろな面白い作品がいっぱい集まっていて、私もよく利用しています。
さて皆さんも知っている通り、これらの動画サイトにはいわゆる違法コピーと呼ばれる動画が出回っています。もちろん違法状態をそのまま放置するわけにはいかず、例えばニコニコ動画などでは著作権違反の報告のあった動画などを削除するなどの対応を行っているようです。
先日、あるアーティストのPVをつなぎ合わせた動画がニコニコ動画に投稿されているのを、たまたま見ました。その動画というのは単にPVをつなぎ合わせたのではなく、様々な印象的な映像に加工を加え、さらに音楽・リズムをうまくMIXしていて非常にインプレッシブなRemixに仕上がっていて、私は思わず見入ってしまいました。
そのRemixは元の作品の丸コピーではなく、作品のかっこよさを引き出し、聴きたいと思わせるための導火線のようなものでした。いわゆる二次創作物としてかなりの創作性があるような作品だと思います。
おそらく、その作者はそのアーティストが好きで、その人気を上げるがためにその作品を作ったのかもしれません。その思い入れが昇華して、非常にカッコいい作品に仕上げたのではないかと思うのです。しかしその一方で、その作品が違法な二次創作物であるという認識も持っているように思える作者のコメントが書いてありました。
その作品はニコニコ動画で人気がでて、上位にランクされるようになりました。ニコニコ動画を見た人が書いたコメントを見る限り、そのアーティストの人気を支えるのにかなり寄与していたように思えます。
が、結果として、そのRemixは削除されてしまいました。
その作者はビジネスとは関係なしに、個人的な好意からそのアーティストを応援する意味で、その違法な二次創作物を作っていたように思います。いわば、善意の著作権侵害を意識的にやっていたのではないでしょうか?
このケースでは、おそらくそのアーティストにとっては当事者による通常のマーケティングでは得られない、非常に高いプラスの効果が得られたと思います。一方で著作権が侵害されて誰かが損をしているとは思えません。
しかし残念ながら、今の法律では対処のしようがないんです。
実は今回のケースだけでなく、今までニコニコ動画などには類似のケースが数多く見受けられました。最終的にはそれらの動画は消されてしまうのですが、そのたびごとに、これは何とかならないのか、と思ってしまいます。
実行面まで考えると、簡単に対処できる話ではないとは思うのですが、こうして消されてしまうことで、何かとても、大きなクリエイティビティの損失が起きているように思えるのです。