インターネットという伝言ゲームの怖さ

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投稿日:2009年06月23日 作成者:yasunaka

いまさら言うまでもないですが、インターネットはビジネスと個人の両方に対して、従来のマスメディアとは異なり、双方向のやり取りが可能なメディア、また個人でも情報発信が出来るメディアという意味で、コミュニケーションのあり方を大きく革新しました。少し前のブログで紹介したGoogle waveのようなものが普及してくれば、さらにリアルタイムなコラボレーションも可能になり、情報の伝達スピードは格段に上昇すると思います。

インターネット上のテクノロジーは、このように早く情報を伝達したり、欲しい情報にアクセスするための検索の仕組みなどを提供することで、巨大なナレッジベースをわずか10年あまりのうちに作り上げることに成功しています。

しかし一方で、情報の信憑性を保証する仕組みはあまり広まっていませんよね。

初期のころから匿名性が大きく取り上げられ、言いっ放しが可能な仕組みとして注目された部分も多く、結果として信憑性のレベルが高いものから低いものまで、様々な情報が同列に扱われてしまっています。

情報ソースが明確であれば、そのソースに対する信用度に応じて、情報の信憑性を判断することは可能ですが、現状では情報ソースが不明瞭な情報も非常に多く、さらに情報のコピーが大量に行われているために、情報源を探ることが分かりにくい場合も多々あります。

この結果、いわゆる「伝言ゲーム」が起きて、本来のニュアンスや意味とは違うものがインターネット上にばら撒かれたり、またそれが既成事実化するようなことも起こりがちです。

もしかしたら、そろそろニュースやブログの内容にも電子署名が必要な時代なのかもしれませんが、どうやってインフラを整えていくことができるのかが問題ですね。せめてSSLと同等に、誰でも手軽に使えるようになれば良いのですが。

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信用(ブランド)の構築と喪失

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投稿日:2009年06月19日 作成者:yasunaka

私は小さい頃から何かモノを作るのが好きな人でした。例えば子供時代、砂場で遊んでいるときも、山を作ったり、ダムを作ったり、とにかくいろいろなものを作って遊ぶのが好きだったようです。

でも一方で、そういうのを破壊するのが好きな子供もいますよね。そういう子とは良くけんかしていたかもしれない。

何にせよ、作り上げるという行為は時間のかかる作業です。地道にいろいろなことをやらないと、物にならない。一方で、破壊するという行為は一瞬で終わります。

かかる時間を厭わない人は、モノを作ることが好きな人になるし、面倒くさいと思う人は破壊することが好きな人になるのかもしれません。

今日のYahooのニュースに「Perfumeかしゆかにデート報道」という記事が載っていました。私は音楽については普段クラッシックやジャズを聴くことが多いのですが、(大昔はDTM野郎だったこともあって)、Perfumeは好きで良く聴いています。それで気になってネットのブログなどを眺めてみたのですが…

そこで感じたのが信用(ブランド)の構築の時間と喪失の時間の差です。「Perfume」という信用(ブランド)を構築する作業は、モノを作る作業と同様にとても時間のかかる作業だったはず。一方で破壊するのに要する時間は一瞬なんだな、と。

アイドル(なの?)に対する「思い」と「信用(ブランド)」というのは一見関係がないようですが、無形資産という観点では同類です。

Perfumeというグループが一生懸命時間をかけて信用(ブランド)を構築してきたのに、世の中には破壊することが好きな人も多いようで、つまんないことをあれこれ言われて、あっという間に壊されてしまう。それで、ちょっと子供時代の砂山を思い出してしまった次第です。

企業にとっても同じことかもしれません。信用(ブランド)とは財産であって、構築には非常に時間がかかるものです。しかし失うときは一瞬。

私のような者からみたら上記の記事の内容は(その1週間前の記事の件も合わせて)微笑ましく思える程度だし、モノを作る側の立場の人間として、ここはぜひ踏ん張ってさらにステップ・アップしていただきたいです。破壊者に負けずに、がんばれ。

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10年先、20年先を見越しての構想

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投稿日:2009年06月19日 作成者:yasunaka

日経新聞の朝刊に連載されている「私の履歴書」は私が大好きな読み物の1つです。今月は経済学者で一橋大学名誉教授の篠原三代平さんが書いていますが、今朝(6/19)の産業政策論というのが久々にぐっと来た内容でした。

時代は昭和30年代初期。日本はそこから高度成長を遂げるわけですが、篠原さんは当時、これからの産業政策がどうあるべきかを通産省の若い役人の方々と自宅で夜遅くまで議論し合っていたそうです。

その時代、日本の輸出産業で強かったのは価格が国際的に安かった繊維工業でした。一方、自動車産業は技術進歩の可能性が非常に高いと考えられたものの、産業としてはまだまだ非弱なレベルだったそうです。

その時代のベストな選択肢としては、おそらく繊維工業を産業政策の中心に据えるというものだったのかもしれません。しかし篠原さんは次のように書いています。

『が、後発国は、先進国を追い上げるには10年、20年先の諸産業の成長可能性まで視野に入れなければならない。それが、需要サイドから言えば「比較需要成長率」や「所得弾力性」の大小であり、供給サイドでは「比較技術進歩率」の大小なのである。』

弱者が強者に勝つためには、長期のビジョンと今後を予測できる数字(この場合は経済統計値)を持つべし、ということなのでしょう。

今の現状だけを見ていたらだめだ、ということですね。つまり未来は現状の延長線上にあるのではないよ、とも受け取ることができます。成長の変化率を考えなければならないのです。

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Google Waveの衝撃

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投稿日:2009年05月29日 作成者:yasunaka

いや、これは、あまりにもすごくて言葉を失った。

Google wave

まさに「やばい」という言葉がぴったりとくる。Googleはまた、ものすごいものを作ったものだ。

リアルタイム・コラボレーションツールということで、最初はCISCOのWebExみたいなものか?と思っていたのですが、これはもう完全に、異次元のプロダクトです。

おそらく、ビジネス分野においても次世代の「メール」のような存在のツールになるのではないでしょうか? そのぐらいのインパクトがありそうなプロダクトです。

単に技術的にすごいというだけでなく、使えそうなシチュエーションがいろいろと想像できます。いろいろな場面にWaveが入り込んできそうです。

ドキュメントを中心としたコラボレーションという意味では、当社プロダクトのcrossnoteに近い部分があります。実際複数人が同時にドキュメントを修正し合い、変更点を互いに教えあうことができる、という点は同じです。Waveはそれをリアルタイムにやっているのが技術的にすごい。スライダーバーひとつで過去の履歴を瞬時に辿ることができるってのも、カッコいい。

まあ、crossnoteはリアルタイムである必然性はないと考えていますが。(別に負け惜しみではなく、こちらを参照⇒CDSとコンカレント性

冷静に考えてみると、実はGoolge Docsの延長線上にあるプロダクトであると感じます。Google Docsをコラボレーションという軸で昇華させたプロダクトといえましょうか?

技術的には、今までGoogleが開発してきた様々な要素技術を惜しみなくつぎ込んだ、ものすごいものになっています。GearもGWTも結局これを作るためだったんだな、と気づいたとき、Googleの真の強さ、そして(これだけのものを作り上げることができる)怖さがわかった気がしました。

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なぜ『なぜPCの利用時間の3割は「ムダ」なのか』という記事は無駄なのか

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投稿日:2009年05月22日 作成者:yasunaka

Yahooの先頭ページのリンクに次のような記事がありました。

なぜPCの利用時間の3割は「ムダ」なのか

読んだら書かずにはいられなくなりました…

「無能な管理職が「暇な社員」をつくり出す」というところで、次のようなことが書いてあります。

*** 引用 ***
ある企業が監視ソフトを導入したときのこと。ある女性社員が、会社の仕事は短時間で済ませてしまい、残りの時間は自分で立ち上げたオークションサイトを1日中運営していたことが判明した。それまでなぜ、誰も気づかなかったのかといえば、彼女は「女性社員ではナンバーワン」と言われるほど優秀な人物で、仕事ぶりが完璧だったからである。
 そこで、経営者が本人を呼び出して理由を問いただしたところ、彼女は泣きながら答えた。
「仕事がないんです」。
*** 引用終わり。文脈を理解する上で元の記事を参照することをお勧めします ***

この記事では優秀な社員が暇にならないように仕事を与えるのが優秀な管理者で、管理者が無能だから社員が遊ぶのだ、という論調です。

もちろん、本人が仕事が無いことを訴えていたのに上司が適切に対応していなかったのが判明した、という良い面もあるかもしれませんが、もしこの当人であれば、これはだいぶ傷ついたのではないでしょうか?

まあ、社会的に考えれば上記のような状態に問題があるのは事実です。でも、それを監視することで社員に暇なく仕事を与え続けることが管理者の役割ではないと私は思います。

極端に言えば、本当に優秀で、通常の人以上に仕事をしているのであれば、余った時間は(ちゃんと認めてもらったうえで、という前提付きですが)別なことに費やすというのも、ありなのではないでしょうか? またそうすることで仕事へのインセンティブが沸くのであれば、全体的にはそのほうがかえって効率が良いことになりそうだと思います。

もし、暇な時間を作らないために、必要もない仕事を押し付けられたら、誰だって嫌になり、生産性は向上しないと思います。しかもそれをチェックするために監視するというのはどうなのでしょうねぇ。

監視ツールは本来社員の不正行為を防ぐために使うべきものであって、社員を管理するために利用するのは本末転倒な気がしたのですが、皆さんはどう思われますか?

(追記:そうそう。Tom DeMarcoの「ゆとりの法則」がお勧め)

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crossnote Ver 1.4.0リリースしました

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投稿日:2009年05月11日 作成者:yasunaka

昨日、crossnote ver 1.4.0をリリースしました。今回のリリースでは、今までの1.3系列から1.4にバージョン番号を上げ、数多くの機能改善を行っています。

1.Word 2007ファイルのcrossnoteドキュメントへの変換機能

Word 2007ファイルをcrossnoteに変換して取り込めるようになりました。Word 2007ファイルにcrossnoteのテンプレートを適用して取り込むことができます。今まではエクスポート(取り出す)だけだったわけですが、これで取り込み側もサポートできたことになります。

2.テンプレート登録機能

crossnoteドキュメントや外部ファイルなどをテンプレートとして登録することができるようになりました。

テンプレートの登録先としては

■プロジェクト
■ポートフォリオ(プロジェクトの上の階層となる入れ物)
■会社全体

を選ぶことができます。例えばポートフォリオに登録すれば、そのポートフォリオに所属するプロジェクト全体でテンプレートを共有できるようになります。

3.Just Right!4等による校正支援機能

Just Right!4は株式会社ジャストシステムの文章校正支援アプリケーションです。crossnoteのドキュメント上で直接Just Right!を使って校正の指摘および訂正作業を行えるようになりました。

校正支援ボタン(またはF9キー)を押すと校正指摘処理を行い、該当箇所に背景色が着きます。その部分で(Eclipseユーザにはお馴染みの?)CTRL+SPACEキーを押すと校正指摘の内容とヘルプ画面がポップアップします。変換候補を選べばその内容に置き換わります。次の候補を探すにはF4キーを、前の候補に戻るにはSHIFT+F4キーを押します。

Just Right!4の校正支援機能を利用するためには、
■ Just Right!4 CE
■ 指摘情報出力オプション for Just Right! CE
を予めPCにインストールしておく必要があります。

なおJust Right!とは別に、crossnoteの機能として正規表現によるルールベースで指摘する機能もあります。予めプロジェクト毎にチェックすべきルールを登録しておけば、校正支援アイコンを押すだけで文章のチェックを行うことができます。組み込みルールとして、半角カナやNEC特殊文字、IBM拡張文字などのチェックを用意しました。

4.サーバー側処理能力向上のための分散処理対応

技術的な内容なのでちょっと「地味」に聞こえるかもしれませんが、複数のアプリケーション・サーバーで受け持つユーザを分散させることができるようになりました。分散していても管理は1つの管理ツール(Admintool)で集中管理することができます。
これによりユーザ数に応じたスケールアウトがしやすくなりました。

5.その他の改善
 ■ドキュメント・キーワード機能の改善
 ■パスワード運用に対する強化サポート
 ■URI検索機能

今回のリリースの詳細はこちらをご参照ください。
サポート

他にもいろいろと細かい機能改善をしています。
ぜひお試しください。

注)Just Right!は株式会社ジャストシステムの登録商標です

タグ crossnote

LingrとRejawとLunarr

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投稿日:2009年05月08日 作成者:yasunaka

この5月に入って残念なニュースが2つも。

LingrとRejawサービス終了のお知らせ

Upstart software company Lunarr to close

LingrとRejawサービスは江島健太郎さんがインフォテリアUSAで立ち上げたサービス、Lunarrはサイボウズを起業された高須賀さんが立ち上げたサービス(というか、こちらは会社)です。どちらもだいたい3年を経過したところでシャットダウンを決めたようです。

ちょうど当社と同じころに立ち上がったITベンチャーで、(当社と違って!?)両者とも注目を浴びていた存在だったので、それが期を同じくして止めてしまうというのを聞くと、非常に寂しいというか、残念な気持ちです。

LingrとRejaw、そしてLunarrはいずれもコンシューマに向けたコミュニケーション・サービスの事業化を狙ったものだといえます。率直な感想としては、この領域は流行ったけど、ビジネスにするのは結局かなり難しい領域なのだ、ということです。ユーザが増えてくればいずれ商売として成り立つ、という考えで進めても、最終的にどうやってマネタイズするかが見えていないとビジネスとしては成り立たない、ということかもしれません。

もうひとつ付け加えるならば、広告モデルでサービスが成り立つと誰もが幻想を抱いていた、「古き良き時代」にメジャーになれなかった、つまり単に時期を逸してしまった、ということなのかもしれません。

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crossnoteを新幹線で使ってみた

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投稿日:2009年05月07日 作成者:yasunaka

今、出張で東北新幹線に乗っています。
E-Mobile経由でcrossnoteを使ってみたのですが、問題なく動きました。E-Mobileもカバー範囲がだいぶ広がってきたようですね。

ちなみにcrossnoteにはオフラインモードがあって、インターネットが使えない状況でも利用できるようになっています。オフラインモードでもcrossnoteドキュメントは修正可能です。(オフラインモードの場合、いくつかの機能制限があります。たとえば比較機能などは動きません)

タグ crossnote

「ソフトウェアは工業製品ではない」

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投稿日:2009年04月15日 作成者:yasunaka

@ITにRubyの作者であるまつもとさんの講演をまとめた「ソフトウェアは工業製品ではない」という記事が載っています。「コード(ソフトウェア)を書くというのは、組み立てのことではなく、製造業でいう「設計」に相当する」と述べています。以前、ひがやすをさんも同じようなことを言ってらっしゃいましたが、まさにその通りだと思います。

ソフトウェアを作るという行為は上から下まですべて設計であって、手順どおりに同じ製品を作り続ける生産工程ではないのです。

おそらく製造業との対比で言えば、工場に相当するのはデータセンターなのでしょう。

ただ、日本においては一般に、ソフトウェア開発というのは工場における製造と同じようなものと考えている向きが多いのではないでしょうか? コーディングなどの実際にプログラムを作る作業を「製造」と表現する場合がありますが、これなどはまさにその典型だと思います。

この考え方の根底にはウォーターフォール的な思考に基づいて、上流工程が設計のすべてであって、下流工程はただ単に機械的な作業をしているという考え方があるのではないでしょうか? しかしもしそのような機械的な作業ですむことであれば、ソフトウェアの世界ではとっくの昔に自動化されて、人間がやらなくても良い作業になっているはずです。

以前、何かの資料で読んだのですが、日本のソフトウェア開発は、コストは若干高めで生産性は低いそうです。なぜこんなことになっているのか考えてみたのですが、コード(ソフトウェア)を作るという作業を単なる「同じ製品を作り続ける生産工程」だと考え違いをしている間は、人材も育ちません。結果として、いつまで経っても生産性の向上は望めないのではないでしょうか?

タグ システム

素人プログラマ

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投稿日:2009年04月08日 作成者:yasunaka

日本のソフトウェア産業に関わる人って、普通どの程度「ソフトウェア」について勉強しているのでしょうか? こんなことを書くのも、職業プログラマの中にもあまりにも程度の低い、メンテナンス不能なプログラムを書く人が結構多いと感じるからです。

プレゼンテーション層(JSPとか)にごりごりロジックを書きまくる人。

クラス名や変数名に一貫性の無い人。

言語における「普通の」コーディング規約を知らない人。

インデントすら、まともに書けない人。

すべての処理をstaticメソッドで書き上げる人。

言語に標準で付いているライブラリを利用せずに、都度ロジックを自前で書いている人。

一度動いたら、自分の書いたソースコードの見直しをしない人。

意味を理解せずに、前の人と同じように書いているだけの人。

ソースコードのバージョン管理が出来ていない人。

ソフトウェアの技術動向に無頓着な人。

以前、SEとプログラマの対比をこのブログで書いたことがありました。私の持論としては、SEとプログラマの違いは職種の違いであって、上とか下とか関係ない、と思っているのですが、現状は違います。

その原因として、一般のプログラマのレベルがあまりにも低いことも原因のひとつではないかと感じます。

職業にするということは、プロフェッショナルなわけですよね。ところが日本のソフトウェア産業はプロフェッショナルを育てようという意識が希薄です。これではいつまでたっても日本のソフトウェア産業は世界に太刀打ちできないのではないでしょうか。