10年先、20年先を見越しての構想

投稿日:2009年06月19日 作成者:yasunaka

日経新聞の朝刊に連載されている「私の履歴書」は私が大好きな読み物の1つです。今月は経済学者で一橋大学名誉教授の篠原三代平さんが書いていますが、今朝(6/19)の産業政策論というのが久々にぐっと来た内容でした。

時代は昭和30年代初期。日本はそこから高度成長を遂げるわけですが、篠原さんは当時、これからの産業政策がどうあるべきかを通産省の若い役人の方々と自宅で夜遅くまで議論し合っていたそうです。

その時代、日本の輸出産業で強かったのは価格が国際的に安かった繊維工業でした。一方、自動車産業は技術進歩の可能性が非常に高いと考えられたものの、産業としてはまだまだ非弱なレベルだったそうです。

その時代のベストな選択肢としては、おそらく繊維工業を産業政策の中心に据えるというものだったのかもしれません。しかし篠原さんは次のように書いています。

『が、後発国は、先進国を追い上げるには10年、20年先の諸産業の成長可能性まで視野に入れなければならない。それが、需要サイドから言えば「比較需要成長率」や「所得弾力性」の大小であり、供給サイドでは「比較技術進歩率」の大小なのである。』

弱者が強者に勝つためには、長期のビジョンと今後を予測できる数字(この場合は経済統計値)を持つべし、ということなのでしょう。

今の現状だけを見ていたらだめだ、ということですね。つまり未来は現状の延長線上にあるのではないよ、とも受け取ることができます。成長の変化率を考えなければならないのです。