知恵を出すということ

コメントは受け付けていません

投稿日:2012年11月19日 作成者:yasunaka

もう先々週の話なのですが、11月10日のがっちりマンデーの星野リゾートの特集を見て、非常に感銘を受けました。

星野リゾートは軽井沢の温泉旅館を基点に、日本国内の様々な経営不振に陥ったリゾート施設や旅館などの再生を手がけている会社です。「星のや」に代表される超高級リゾートのイメージが強く、私も一度行ってみたいと思っている旅館なのですが、がっちりマンデーで紹介しているその経営戦略には目を見張るものがありました。

1.施設個別の弱み・強みをきちんと評価し、誰に対してどのようなサービスをどのように提供すべきか、という戦略が明確である。

2.社長自ら現場へ出向き、従業員へ経営戦略を説く。

3.従業員に対して非常に合理的である。

4.共感をベースとした経営である。

最初の戦略が明確であるという件は、リゾナーレ八ヶ岳の例が放映されていました。リゾナーレ八ヶ岳はもともとはマイカル系列のホテルだったようで、マイカルの経営不振と同時に経営が傾いたようなのですが、その運営を引き継ぎ、見事なまでに再生させています。その手法ですが、まず、その施設には温泉がありません。これは通常、大きな弱みになってしまうわけですが、これを逆手に取り、ターゲット層として温泉をそれほど求めていない小さなお子様連れの家族に切り替え、そのターゲット層向けのサービスに大きく方針転換した、ということをやったそうです。そしてそれが大いに当たった、というわけです。

まだテレビでは社長があちこちの星野リゾートの施設に出張し、着いた先では直ちにホワイトボードを背に社員研修を始め、経営戦略を説いている姿を映していました。社長自らの言葉で一人ひとりの社員研修を行う、というのは半端でなく大変なことだと思いますが、一番効率的に経営戦略を伝播させる方式でもあるわけです。

また従業員にマルチタスクと称して色々やことをやってもらう、ということを説明していました。これにより生産性が向上し忙しくはなるのですが、結果として従業員は拘束時間を短くすることができるというのです。これは従業員にとっても合理的なことだと思います。やることがあまり無くて、でもだらだらと居続けなければならない、というよりも、やることが一杯あってもちゃんと普通にがんばれば時間通りに切り上げることができる、というほうが、従業員にも幸せなはずです。

そして最後に、社長は「これはだめだ、ここをなおせ。」というのではなく、「この旅館ではこんな工夫をしているよ、これはいいね。」というように、自分がいいと思う内容を社内ブログで広め、一人ひとりの従業員に自ら考えてもらうことで自然に改善を促す、というのです。私はこれは「共感」の経営なのだな、と感じました。

まとめると、星野リゾートの経営スタイルとは従業員をいかに育てるかという点に注力した、従業員との共感による経営だ、と言えるのではないでしょうか? 確かにリゾート施設においては従業員一人ひとりの考え方が直接サービスの質につながるので、もっとも重要なポイントなのだと思います。軍隊調の「ケツを蹴っ飛ばして命令する」というのとは間逆のやり方で、経営スタイルとしての1つの理想形のように感じます。

そして最後に。一番私が驚いたのは、温泉旅館やホテルという、いわばコモディティ化した商品が考え方でこんなにも変わるのだ、という事実です。私が属しているデジタルの世界ではものすごい勢いでコモディティ化の波が押し寄せ、これから先、いったいどうすべきなのか見失いがちですが、それは単に考えることを放棄しているだけに過ぎないのだ、という思いを強くしました。星野リゾートを少しでも見習い、新しい価値感を提供できるようにがんばろうと思います。

タグ 雑談

crossnote ver 1.6.6リリース

コメントは受け付けていません

投稿日:2012年10月15日 作成者:yasunaka

本日、crossnote ver 1.6.6をリリースしました。

新しいcrossnoteでは、レビュー・プロセスをトータルにサポートするようになりました。またcrossnoteドキュメントの参照コピーした部品のリンク先をまとめて表示できるようになりました。

1.レビュー・プロセスのサポート

crossnoteドキュメント及びWord、Excelについて、複数のレビュアによる同時レビューをサポートします。大まかなユースケースは以下のような流れになります。(下記のエディタとは編集者のことです)

[1] エディタ(またはマネージャ)が、レビュア(複数可)を指定する。

[2] レビュアが、自分にアサインされたドキュメントにコメントや質問を付ける。

[3] レビュアが、レビュー結果を報告する。

[4] エディタ(またはマネージャ)が、レビューの進捗状況を確認する。

レビュアのアサインやレビュー結果の報告は、crossnoteの変更通知機能に統合されていますので、今までの使い方の延長線上でレビュー機能を利用することができます。

以下の画面は、レビュアが自分にアサインされたドキュメントについて、コメントの編集によるレビューを開始するためのものです。ドキュメントの計画・管理画面で「レビュー担当」を選択すると、自分にアサインされているドキュメントの一覧が表示されます。

crossnoteドキュメントの場合、そのままコメントを付ければ良いのですが、WordやExcelの場合、コメント編集を行うためには、今までは排他ロックをかけて、他の人が修正できないようにした状態で行う必要がありました。このようにWordやExcelで複数人で同時にレビューするのが難しかったのですが、新しいバージョンでは上記の「Excel / Wordコメントの編集を開始」を実行すると、ローカルにファイルをコピーし、そのファイルに対してコメント編集が可能になります。

WordやExcelのコメント編集が終わったら、同じメニューを開き、「コメントの編集を終了し、コメントを取り込む」を実行すると、ローカルのファイル・コピーからコメントを取り出します。またその際レビュー結果を報告するための画面が表示されます。

コメントおよびレビュー結果はアップデートで各ユーザに変更通知されます。

 2.crossnoteドキュメントの参照コピーした部品のリンク先表示機能

crosnoteドキュメントでは参照コピーを使うことで、参照先の部品が変更された場合に自動的にその変更を取り込むことができます。さらに「自動的に」ではなく、ユーザが確認してから取り込みたい場合には、リンクそのものは保持しつつも参照コピーを解除しておくことも可能です。

後者のように、ユーザが確認してから取り込みたい場合、参照先の部品が更新されていないかどうかを管理する必要があります。これを手軽に確認できるようにする仕組みを追加しました。

ドキュメントに対するプロパティ画面で、「リンク先」というタブを追加しました。このプロパティを開いておけば、ドキュメントをクリックするだけでリンク先を確認できます。

赤くなっている部品は、リンク先に比べコピーの方が古くなっている部品です。

ぜひお試しください。(お問い合わせはこちらまで)

タグ crossnote

オフショア開発の見直し

コメントは受け付けていません

投稿日:2012年09月25日 作成者:yasunaka

今日のyahooや日経新聞に、iPhone製造の下請けメーカーで暴動が起きた事件を報じています。

鴻海傘下の富士康、労働者間の争い受け中国北部の工場を閉鎖

前回のブログでも書きましたが、やはりオフショア開発において、今まで中国一辺倒だったやり方を見直す次期に来たのは間違いないと思います。

この事件は一般労働者が工場で起こした事件ですので、ソフトウェア開発の現場とは単純には比較できないと思いますが、現在の中国国内の状況から推察すると、中国国内の賃上げ・待遇改善要求がどんどんエスカレートするのは自然な流れだと思います。またその流れの中で、色々な問題や事件が発生するリスクが大幅に高まっていると考えられます。

カントリーリスクを考える上では、当然のことながら国ごとの特殊性、事情をよく考慮する必要があります。上記のような現状はどの国でも起こっている、ということではなく、今の中国だから起こりうることだ、ということを理解する必要があります。

自分のところは、まさか大丈夫だろう、という考え方は、すでにリスク評価を放棄しています。まじめに代替案を検討・実行していかないと、いざ問題が発生してからでは遅いのです。

タグ 雑談

オフショア開発のリスク

コメントは受け付けていません

投稿日:2012年09月16日 作成者:yasunaka

中国での反日活動が手がつけられない状況になっていると、ニュースで伝えられています。現地からの映像などを見る限り、一般人でも現地ではいつ巻き込まれてもおかしくない、洒落にならない状況のようです。

今まで中国でのオフショア開発においては、カントリーリスクについての考慮が不十分のまま拡大してきたように思えます。例えばあまり考えたくない事態ですが、日本向けのソフトウェア開発プロジェクト内で、特定メンバーによる故意の情報流出や破壊活動が発生する、などといった事態も想定できなことではありません。安全面、セキュリティなど、単なる値段の「安さ」では釣り合うことのない、もっと重要なことを考える時期が来たようです。

リスク分散を図る点で、短期的には国内での開発へのシフトを早急に進め、長期的には中国以外のインド、ベトナムなどの他の国でのオフショア開発を考えるべき時期だと思います。

タグ 雑談

crossnote ver 1.6.5リリース

コメントは受け付けていません

投稿日:2012年09月10日 作成者:yasunaka

本日、crossnote ver 1.6.5をリリースしました。

ver 1.6.5では、Active Directoryへの対応が可能になりました。またドキュメントのプロパティ管理や質問・コメント管理機能を向上させました。

1. Active Directory対応

crossnoteをActive Directoryと連携管理できるようになりました。連携させた場合、パスワードはWindowsのパスワードと統合され、Active Directory側のユーザ情報が変更された場合、それを連携させることができます。
なおこの機能は自社でcrossnoteサーバを運用・管理されるお客様向けの機能になります。

2. ドキュメントのプロパティ管理

ドキュメントをクリックするだけでドキュメント・ステータスやメタ情報(ドキュメント・キーワード)、タグ、作成日時といったドキュメント属性などを参照することができるようになりました。

各項目はリンクになっていて、クリックすると変更するための画面が表示されます。

3. 質問・コメント管理機能の向上

質問やコメントを見るためのレビュー画面において、そのコメントを付けた元の文章を参照できるようにしました。

crossnoteドキュメントの場合はもちろんのこと、ExcelやWord 2007ファイルに付けたコメントデータをcrossnoteに取り込んだ場合にも、レビュー画面内でコメント元が参照できます。また同時にレビュー画面のデータをワンタッチでExcelへエクスポートすることも出来るようになっています。

コメントされた部分のリンクをクリックすれば、該当アプリケーションが立ち上がり、コメントの位置へ移動します。

さらにcrossnoteへの取り込み時に、以前は質問・課題としてのみ取り込み可能でしたが、コメントとしての取り込みもできるようになりました。(質問・課題の場合、プロジェクト全体で共有されてしまいますが、コメントの場合、対象ドキュメント内で閉じていますので、気軽に使えます)

4. ユーザマニュアルの改訂

ユーザマニュアルを最新化しました。なおこのユーザマニュアルもcrossnoteドキュメントで作成し、HTML変換することで作成しています。crossnoteドキュメントなので、当然PDFにしたり、Wordファイルとして出力することもできます。PDFやWordの場合には、綺麗にページングされます。

ユーザマニュアルは全部で260ページにも渡る大きさなのですが、作成の際にはこれを複数の部品枠に分割し、それらを参照コピーすることで1つのドキュメントに纏め上げています。分割すると、ドキュメントが軽くなり変更もやりやすくなり、色々な点でメリットがあります。

以下は全体を纏め上げている「ユーザ・マニュアル」本体です。内部が複数の部品枠に分かれ、それらは別のドキュメントを参照コピーしています。

上記の中の1つの部品枠の管理例を以下に示します。ユーザマニュアルは、この「さまざまな検索方法」というドキュメントを1つの部品として組み込んでいます。

このように分割管理しても、1つのユーザマニュアルとしてまとめた場合、ナンバリングが自動的に再編され、全体を通した形で設定されます。

タグ crossnote

crossnote ver 1.6.4リリース

コメントは受け付けていません

投稿日:2012年07月10日 作成者:yasunaka

本日、crossnote ver 1.6.4をリリースしました。

version 1.6.4はバグFIXなどを主としたメンテナンス・バージョンです。詳しくはこちらをご参照ください。(なお、修正点の一覧でコンポーネントがeCTD、およびeCTD viewerとなっている部分は、それらのPluginについての修正点です。Pluginを導入されていないお客様については影響ございません。)

タグ crossnote

うるう秒の挿入で複数のサイトに障害が発生

コメントは受け付けていません

投稿日:2012年07月02日 作成者:yasunaka

CNETでこんなニュースが。

— 引用 「うるう秒の挿入で複数のサイトに障害が発生」 —

グリニッジ標準時(GMT)7月1日午前0時、協定世界時にうるう秒が追加されたことで、複数の人気ウェブサイトやソフトウェアプラットフォームでサイトの混乱が発生したようだ。

…(途中省略)…

Redditは、Javaで構築されたオープンソースデータベース「Apache Cassandra」に問題が発生したのはうるう秒が原因、とTwitterで述べた。

…(途中省略)…

「Firefox」ウェブブラウザの開発を手がけるMozillaは、Javaで構築された別のオープンソースプラットフォーム「Hadoop」で遭遇している問題について、うるう秒が原因だと述べた。

— 引用ここまで —

なんでJavaでうるう秒で障害が発生するの?と思って調べてみたら、Javaそのものではなく、ベースのLinuxカーネルの不具合らしい。(参照「うるう秒のあとにMySQLなどのCPU使用率が高騰する件について」)

比較的新しいカーネルの場合で、ntpサーバを動作しているときに影響を受けるらしいです。要注意!

タグ システム

クラウドにおける耐障害性の高め方

コメントは受け付けていません

投稿日:2012年07月02日 作成者:yasunaka

ここ数日、ファーストサーバーのデータ消失による大規模障害や、Amazon EC2サービスが落雷で止まった件など、クラウドサービス関連の障害が相次ぎました。

クラウドの方が運用ノウハウが集約する分、個別に運用するよりも耐障害性が高まるように思えますが、このところの障害の様子を見ていると、必ずしもそうも言えないようです。ストレージ等が集約する分、複数のサービスが同時にダウンしてしまうリスクがあることがはっきりしてきた、といえるかもしれません。

このリスクを分散するにはどうすべきか、ですが、1つの解としては、インフラを別とする、まったく別の業者をバックアップ先として用いる、というのが有効でしょう。つまり複数のクラウドを同時に分散して用いる、という考え方です。

実際、私どものお客様の環境で、そのようにまったく別のクラウドサービスをバックアップとして利用するように設定した例があります。まったく別のインフラである故、ファーストサーバーのトラブルのようにバックアップまで同時に消失したり、Amazon EC2のトラブルのようにデータセンターそのものがダウンすることですべて動作しなくなってしまう、といったリスクを回避することが可能になります。

ハードウェアの冗長性確保、という観点で、大切なデータを守るためにも、複数クラウドの利用はいかがでしょうか? 🙂

タグ システム

SEよ、豊かな語彙を「使うな」

投稿日:2012年06月19日 作成者:yasunaka

IT Proに「SEよ、豊かな語彙を持て」という記事があって、気になって読んでみたのですが、正直これは何?と思ったので、ここに書いておきます。

記事の内容としては、SEが設計書を書く際、豊かな語彙を知っていないと、正確に内容を伝えることができないよ、というもの。記事からの抜粋ですが、「ある概念を示すのに言葉を1つか2つしか知らないとすると、どうやって分かりやすいとか簡潔だとか言えるのか。同義語を5つ6つ知っていて、文章を読む人の立場を考えて、適切な言葉を選んで使う。その結果、分かりやすく簡潔になる。」などと主張されています。

Twitterなどの呟きを見ると

・肯定的な意見

・自分の語彙数に関する感想など

が書かれていて、総じてこの記事に反論する呟きがあまり見当たらなかったのですが、それが私にはとても不思議に感じたのです。

豊かな語彙を知っているべき、という主張そのものは、もちろん、その方がいいに決まっているのですが、その豊かな語彙を設計書に反映させるとなると、話は別で、絶対に反対です。

というのは、設計書は正確に「書く」という点も重要なのですが、関係者に正確に「伝える」、という観点はもっと重要です。そういった意味では、中学生が読んででも内容に齟齬が生じないような書き方の方が望ましいのです。そのためには、むしろ、使用する語彙数を制限し、できるだけ簡潔な言葉で記述するべきなのです。

微妙なニュアンスが重大な意味を持つような設計書なんで、危険極まりない。だったら、そんな微妙なニュアンスは、むしろ設計書からは除外すべきじゃないですか?

しかもオフショア開発が盛んな昨今、そんな設計書は海外に渡せません。

そんな設計書、誰がメンテナンスするんですか?

設計書の品質を高めるために重要なのは、語彙数を増やすことではなく、言葉の意味がぶれないように、できるだけ統一した基準で記述することです。例えば概要設計の段階で、使う単語を統一するために辞書を作りますよね。概念モデルだって、できるだけ簡潔な言葉で表現します。ユースケースだって、書きっぷりを揃えるのは基本中の基本です。つまり現場は、こうして努力して語彙数を減らす方向に持っていこうとするのです。

で、SEは、どこでその豊かな語彙を使うのですか? SEは小説家ではないのです。

この記事の一方の当事者である福田さんが書かれた書籍『SEを極める 仕事に役立つ文章作成術』は、私はまだ読んでいませんが、目次を見る限り、非常に良い内容が書いてあるように思えます。それに対して、この記事での取り上げ方が「語彙数」というごく一部分にフォーカスし過ぎ、何か本質的ではない部分を、記者の視点で歪めてしまったのではないか? そんな気もしました。

タグ 雑談

吉田秀和さん

コメントは受け付けていません

投稿日:2012年05月27日 作成者:yasunaka

吉田秀和さんがお亡くなりになった、というニュースを見ました。

子供のころ、家に「LP300選」という単行本があり(多分父親が買ったものだと思います)、そのときには既にもうだいぶ古い本だったように思うのですが、大好きで熟読していました。当時、クラッシック初心者の私は、この本がバイブルであり、私の音楽に対する興味の入り口でした。

この本の著者が吉田秀和さんでした。

その後、毎週日曜日の朝の9:00にNHK-FMでやっていた「名曲のたのしみ」というクラッシック音楽を紹介する番組があり、これが私の1週間の楽しみでした。この番組を聴き始めたとき、語り手の「吉田秀和さん」という名前に何か聞き覚えがあるものの、最初はその本の著者だと気づかないで聴いていたのを思い出します。

ゆっくりとした語り口でバッハやモーツアルトなどを紹介するのですが、とても味のある番組でした。この番組、40年間にも渡って今もまだ続いていたのですね…

ご冥福をお祈りいたします。

タグ 雑談