人材は交換不可能
投稿日:2007年05月11日 作成者:yasunaka
プロジェクト・マネージメントは人をリソースとして扱うことから始まりますが、私はこの、人を「リソース」と呼ぶことが嫌いです。なぜならば人は一人ひとりが異なり、基本的には交換できないものであり、お金や資産などといった顔の見えない何か物質的なものと同等に扱うことに抵抗があるからです。
確かに人はマニュアルどおりに動きさえすれば良い、といったような職種も世の中にはあるかもしれませんが、システム開発のプロジェクトに関わる人達というのは単純にマニュアル通りに動けば済むような簡単な仕事ではありません。各自がそれぞれ過去の経験を通じて様々なノウハウを培っていて、そういったノウハウを活用することで始めて成り立つ職種です。この人達は簡単には交換できないのです。
一方でシステムが特定の人に依存してしまう状態のことを「属人的」と呼んで、一般には避けるべきこととしています。が、本当にそうなのでしょうか? 例えばある複雑なシステムに関与した人が非常に優秀で、いろいろと湧き上がる問題を次々と解決していたとします。そうすると周りがその人がいないとシステムが成り立たないと考えて、属人的になってしまっている、と判断する場合があるかもしれません。
確かに上記のケースではもしその優秀な人がいなくなってしまったらどうするのか? というリスクが存在します。でもそのような複雑なシステムに関与する人は、それについて徹底的に理解するしかありません。理解してマスターするには時間がかかるのです。つまり複雑なシステムを扱っている以上、その人は本質的に簡単には交換できないのであり、「属人的」と呼ばれる状態にならざるを得ないのだと私は考えます。
これはドキュメントを整備してあれば済むというものではないことも皆さんは感づいているでしょう。もちろん最低限、ドキュメントはそろっているべきなのですが、それが揃っているからといって事が起こってからドキュメントを見ればいつでも対処可能なんてことはありえませんよね。ドキュメントやマニュアルでは未知の問題に対する対処法は書けません。やはり事前そのシステムを十分に理解しておくことが必要であり、その理解度が十分に問題に対処可能になるまで深まるには時間がかかるのです。
究極的にはシステムの複雑さを減らすことがベストなのですが、元が複雑なものから単純なものへ変えることができるのはよっぽどの天才でなければできない仕事で、まさに「属人的な」仕事が要求されます。
見方を変えると、属人的なのが問題なのではなく、その人がいなくなってしまうリスクが問題なのだと思います。まずはその人がいなくならないよう努力すること、そして時間をかけて同じレベルまでこなせる人を育て上げることこそ、本当のリスク回避と言えるのではないでしょうか。