マッシュアップはどこへ行った?
投稿日:2009年09月13日 作成者:yasunaka
ITの用語には他の業界の言葉を取り入れたものがいくつかあります。でもあまり定着したものは無い気がします。例えばWebサーフィン。これはもう恥ずかしくて、誰も使いませんね。
少し前、Webサービス(API)を組み合わせて新しいサービスを作る場合のことを表すマッシュアップという言葉が流行ったと思います。マッシュアップは元々は音楽業界の言葉だそうで、異なる曲のボーカルトラックとオーケストラトラックを重ね合わせることで、面白い効果を作り出すことのようです。その方法と(少し)似ていて、かつ音楽と絡めることでなんかかっこよく聞こえる、ということで、取り入れられた言葉なのかもしれません。
さて、なぜWebのマッシュアップは結局あまり騒がれなくなってしまったのでしょうか?以下のような理由が考えられると思います。
1.思ったほど効果的なアプリケーションが実現できなかった
2.元のAPIを利用するにはさまざまな制限があり、ビジネスとして成り立ちにくかった
でも、実際に検討する立場になるとわかるのですが、もし2の制限がもっと緩いものであれば、もっと効果的なアプリケーションが次々と作られていたかもしれません。現状では、マッシュアップは趣味でお楽しみアプリケーションを作るレベルならいいのですが、商用利用するようなアプリケーションは、2の制限でなかなか実現しづらいのです。
まあ提供する側の論理からすれば、勝手に使われてしまう以上、そこに商業利用する際の制約を入れるのは自然な成り行きだと思いますが、結果としてそれが利用されるフィールドを狭めることになっているのではないかと思えます。かくして、マッシュアップは廃れたのでしょう。
しかし昔からのITにおける大テーマ「再利用(リユース)」という観点で考えた場合、Webサービスというのはコンポーネントとして最適な粒度であり、かつ手軽に利用しやすい形態という意味では、もっと活用すべき技術のはずです。今までのマッシュアップというと、どちらかというとユーザーインターフェースに近い、利用する末端における組み合わせばかりが目立ちましたが、もっといろいろな階層でWebサービス同士の組み合わせが実現できれば、社会全体を巻き込むような、より面白いものが出来る可能性があると思います。
ビジネスとして成り立たせるという意味では、インフラとして誰でも好きな形態で利用可能なWeb APIというのが必要なのかもしれません。そしてそのインフラを利用するための、フェアな課金の仕組みがあってもいいような気がします。