競争入札制度

投稿日:2007年10月02日 作成者:yasunaka

公的機関や公共性の高い法人などがシステム開発を委託する場合、通常は競争入札が必要とされています。コストを下げるという観点ではとても重要な仕組みだと思いますが、私は果たしてシステム開発の委託に対してこの競争入札という仕組みは適切なのだろうか? といつも疑問に感じてきました。

その理由は以下のような点です。

1.価格が安いところが本当に適切な委託先なのか?

2.ある程度の規模のシステムを委託開発する場合、「上流工程」と「下流工程」を分離発注せざるを得ないが、このことがかえって非効率性を生まないのか?

3.競争入札制度が成り立つには、「どこに発注しても結果は同じ」という前提が必要だと考えられるが、これは果たしてシステムの委託開発について成り立つのか?

価格については、確かに安いに越したことはないのですが、プロジェクト・マネージメントの基本原則であるQuality/Cost/Deliveryのバランスのことを考えた場合、CostとDeliveryが極端に抑えられた成果物のQualityはどう担保するのだろうか、と思います。つまり果たして委託する側はそのQualityをきちんと『事前に」評価することが出来るのだろうか、ということです。

もちろん受託側がオフショア開発などによって構造的に低コストで開発する能力を持っているのならば良いのですが、それでもQualityを確保するには相応のCostが本質的にかかるはずです。(ここでのQualityは単なるソフトウェアのバグの割合の話ではなく、そのソフトウェアがどれだけ「役に立つか」という観点の話です。)

上流工程と下流工程の分離発注と競争入札が組み合わさると、それぞれ違うベンダーが担当することになりますが、これは逆にコストアップ要因になってしまうのではないかと思えます。上流の設計する側がどう作りこむかという観点なしに勝手に設計を進めてしまっては、結局下流工程担当側が相当な修正を強いられることになり、結果として工期が余計にかかってしまうことになりかねないのではないでしょうか?

最後の「どこに頼んでも結果は同じ」というのは、恐らく皆さんも納得しない人が多いのではないでしょうか? やっぱり受託する会社、もしくは担当するプロジェクトチームにより「できる」「できない」の能力差が大きく出るものと私は考えます。プロジェクトが成功した割合は100%を大きく下回っているという事実があります。受託する会社の能力によって、この割合というのは大きく変わると考えるのは自然ではないでしょうか?

世の中の報道は一方的に随意契約が悪い、ということしか取り上げませんが、そういったニュースを聞くたびに果たしてもう一方の競争入札制度が本当に正しい姿なのか、私はいつも疑問に感じています。