SaaSとパッケージ

投稿日:2007年08月17日 作成者:yasunaka

さて、一連のSaaSシリーズの締めくくりは、SaaSと従来のパッケージとの対比をしてみたいと思います。

SaaSとパッケージを比較した場合、どちらも「既製品を提供する」という部分は同じです。どちらも受託開発ではなく、自社のノウハウをベースに自社がリスクをとる形で開発を進め、売るという部分は同じです。そういった提供者側の経済的な効果ではSaaSはパッケージ開発・販売の1形態と考えることができると思います。パッケージソフトは提供者側の立場で見た場合、自分でリスクを負う分、粗利を大きく稼げる可能性があるというメリットがありますが、その部分に関してはパッケージもSaaSも同じといえます。

ではサービスの提供形態の違いという点ではどうでしょうか? 最近ではパッケージ型についても売り切りではなく、期間契約型のものがでてきています。例えばアンチウィルスソフトなどでは1年毎に契約を更新しないと利用し続けることができないものがありますが、こういった形態の場合、実質的にユーザ側の経済的な効果の違いはないと言えます。

そのような場合には、SaaSとパッケージの違いは単に技術的な違いだけなのでしょうか? いや、1つ忘れてはならない部分があります。それはSaaSではシステムの運用の大部分をシステム提供会社が行う、という点です。

つまり各種インフラ(通信環境、設置場所、バックアップの仕組みなど)およびハードウェア、ソフトウェア一式をすべてシステム提供会社側が提供するという点が大きく異なります。こういった設備をマルチテナント方式(複数のユーザが相乗りして利用すること)で利用することにより、コストの最適化が図れることになります。

まとめると、SaaSは期間契約タイプのパッケージソフトと似ていて、さらにその運用をマルチテナント方式でアウトソースしている形態、ということができます。

SaaSというと従来との技術的な違いばかりが強調されがちですが、サービスという視点で考えたときに、実はたとえ従来の技術をベースにしたとしても同じような効果を出せることがわかると思います。重要なのは利用する技術の違いではなく、システムの提供者、ユーザそれぞれにどのようなメリットを提供できるか、です。私がSaaSが優れていると感じるのは、技術的な面の違いよりも提供できるメリットの違いです。単なる技術論で終わることなく、その優れたメリット・可能性を考え、このモデルに移行する時期が来たのではないかと考えています。