技術革新とEA
投稿日:2007年06月12日 作成者:yasunaka
エンタープライズ・アーキテクチャ(Enterprise Architecture、以下EA)が叫ばれるようになって久しいですが、あなたのところでもEAしていますか? ユーザにとってメリットが大きいはずのEAですが、正直なところ、(ちょっと不謹慎ですが)システムを作る側からすると邪魔に思える存在だったりします。それはEAは技術の標準化を求めるものであり、技術革新とは相容れない要素があるからだと思います。今回の案件にはこの技術がぴったりのはずなのに、EAから外れるから使えない! なんて経験、ありませんか?
私が一般に言われるところのEAについて疑問に感じているのは、果たしてドックイヤーと呼ばれるシステムの世界において、技術革新を無視して社内標準を採用し続けることが正しい戦略なのか、という点です。もちろん何でもかんでも新しいものに飛びつけ、と言っているのではありません。しかし適切に技術評価を行ったものであれば、むしろ積極的に新しい優れた技術を採用したほうが長期的には正しい戦略ではないのか、と思うのです。
EAの中でも、例えばデータモデル、コード体系の統合やアプリケーション間のインターフェースの共通化などはぜひ進めるべき課題だと思うのですが、一方、運用管理コストの低減という観点で、対象のハードウェアやOS、ミドルウェアに縛りを付けてしまうというのはいかがなものかと思います。もちろんあまりにバラエティーに富みすぎては管理できなくなってしまいますが、単一のハードウェア、OS、ミドルウェアに統一した場合の、システム・ポートフォリオのライフサイクル全体にかかるコスト・効果と、2,3のハードウェア、OS、ミドルウェアに分散「投資」するコスト・効果を比較した場合、むしろ後者のほうが優れている場合が多いのではないかと私は思うのです。
今の運用管理者では管理できないから、という理由で実現できていないとすると、厳しい言い方をすれば、それはその運用管理者をただ甘やかしているだけにしか思えません。もちろん新しいOSやハードウェアに対応するには、教育コストも余計にかかることになりますが、それを加味してでも将来の技術標準に対するリスクヘッジという観点で十分にペイできるのではないか、と私は考えます。