年金問題とシステム

投稿日:2007年06月11日 作成者:yasunaka

年金記録漏れの問題が世間を騒がせています。年金記録5000万件が過去のシステム切り替え時などでうまくリンクがとれずに宙に浮いたままになっている件です。この件でCSKホールディングスの有賀貞一さんがNIKKEI NETのIT+PLUSに寄稿している記事業務・システムの視点が欠落した「年金記録漏れ」問題の与野党議論を読み、大変面白いとおもいました。

「いかに政治家や官僚が社会インフラである情報システムと、それにまつわる業務処理に無知であるかが明解になった」
さすがシステムの専門家だけあって、業務的な観点、システム的な観点、コスト的な観点から、今回の決定が如何に「何も考えずに」行われているかを指摘しています。

読んでいて感じたのは、著者の有賀さんは「政治家や官僚」に特有なこととして指摘しているのですが、果たしてそうなんだろうか? という点です。実はシステムの開発に絡んで世間一般によるある話ではないだろうか?と思ったからです。

つまり業務的な観点やシステム的な制約事項などが考慮されずに先に予算や期限ありきで物事が決まってしまって、あとからシステム担当者がそれにあわせるために四苦八苦、というのは良く聞く話だからです。もちろん今回の決定は1年という短い期間に区切ることにより、不安感を払拭するという戦略的な意味があるのは間違いなく、戦略を重視してそれにあわせて現実を変えていくという考え方そのものは正しいと思います。これは一般の企業でも同じような話であり、先に予算が決まるのも、対象の業務に対する投資対効果をベースに枠を決めていると考えれば正しい行動だといえます。

ただし問題なのは、いくらそれが戦略だとしても裏付けのないまま事を運んだ場合のリスクを考えていないことにあるでしょう。一年以内の突合を公言したために、期限を守ることが絶対条件になってしまった、と考えると、この後、悲喜こもごもとしたことがいっぱい起きそうだな、と勝手に想像してしまいました。