ガラパゴス化とゲーム

投稿日:2012年03月26日 作成者:yasunaka

最近、日本企業の元気のなさと共に語られることの多い、「ガラパゴス化」。携帯電話などではスマートフォンに対して日本独自仕様てんこ盛りの旧来の携帯電話を「ガラケー」と揶揄するのは、小学生の子供でも知っています。(もちろん普通の小学生はガラパゴス化の本来の意味は知らないでしょうが)

ここまで一般化した「ガラパゴス化」という言葉ですが、さて、果たしてガラパゴス化が本当に日本企業の最近のプレゼンスの無さの理由なのでしょうか?

私は、ガラパゴス化は表面的な出来事であって、競争力低下の、本当のところの理由にはなっていないと考えています。ガラパゴス化が、ローカル・マーケット向けの特殊化という意味で語られるとき、もちろんそのことが国際的な競争力を減らした一因である、というのは正しいと思うのですが、じゃあ、日本向けの仕様が国際標準になってしまえばすべて良かったのではないか?となりませんか?

例えば、AppleのiPhoneは国際的に非常に大きなマーケット・シェアをもつスマートフォンですが、完全にAppleの「独自仕様」です。もちろんグローバルに展開しているという意味でガラパゴスとは言えないのですが、特殊化しているという意味では、ガラパゴス状態に近いわけです。でもiPhoneは誰もガラパゴスだ、なんて言いませんよね。

ガラパゴス化なんて説明は、所詮「勝てば官軍」的な後付の説明であって、負けたほうがガラパゴスになるだけの話であり、そもそもどっちがガラパゴスになるかなんて、競争の途中段階では判断できない場合が多いのではないかと私は思います。

ただ、国際的な標準とするための働きかけが弱いというか下手というか、その部分でプレゼンスを出すことができないということが最大の問題ではないかと思うのです。この状況ではどちらの仕組みが優れている、という話ではなく、どちらがゲームの勝者になるか、という話ではないでしょうか。

こつこつとやることはうまくやるのですが、そういう「ゲーム」にはめっぽう弱い。そしてそもそも、色々理由をつけてそういうゲームを避けて、できるだけゲームに挑まずに来た。それが今の日本企業なのではないかと。

ゲームをするには、まずはゲームを意識することが必要です。どうすれば相手に勝つか、を徹底的に考え抜いて、相手の裏をかいて、攻め立てて、守って、と、アグレッシブな考えと行動が必要になります。でも同質社会の中で敵も味方もうまく渡り合うことができる日本の中でぬくぬくしていると、そういった競争意識は育ちにくい。ゲームのリスクを取りにいくやつを、叩いて潰すことで当面の平穏を保とうとする。

でも、そうしている横で、ものすごいゲームが進んでいたのを、実は知っていたのに動けなかった。これがガラパゴス化の本質ではないかと。

日本のガラパゴス化というのは、競争意識の弱さが問題なのであって、今の日本の企業に本当に必要なのは、強烈なゲーム感覚をもった個の力だ、と強く感じています。